第1回 COMOLY オンラインセミナー

公開:2020年8月14日
発行:COMOLY

ひきこもり経験者が語る!自分を受け入れて、人とつながる方法。

講師:大橋 史信 氏
一般社団法人 生きづらさインクルーシブデザイン工房

2020年7月21日火曜日、第2回目となる“COMOLYオンラインセミナー”を開催いたしました。


講師として、一般社団法人“生きづらさインクルーシブデザイン工房”の代表理事である、大橋史信(おおはし ふみのぶ) さんをお招きし、大橋さんご自身の経験から、対面で上手に話す方法について、ご講演いただきました。


大橋さんは長きに渡り、ご自身の経験や特性を背景に、ひきこもりと発達障害に関わるご活動を続け、今年7月から独立。これまで、助成金審査のプレゼンやイベントの司会、 ファシリテーション、カウンセリングなど、高いコミュニケーション能力で幅広くご活躍されています。


まずは、大橋さん単独のご講演から、筆者が注目した内容を抽出して2つ、ご紹介させて頂きます。

第1部:大橋さんのご講演

「自らの特性を理解し、受け入れるまで。」

大橋さんの生きづらさの幕開けは、9歳のころのいじめ体験だったとのことです。 その後、不登校や転職を繰り返し、家族との関係も良好とは言えませんでした。 「自分は人と違う。生きづらいなあ。」と感じつつ、生きてきた大橋さんでしたが、 33歳のときにターニングポイントが訪れます。


仕事で大きなミスをしたことがきっかけで病院に行ったところ、発達障害と、知的障害があるということがわかりました。 この診断結果には、金属バットで2億万回殴られたような気分になったそうです。


しかし、自分の診断結果を“特性”だと理解した大橋さんは、だからこそ、見えてくるものがあったと言います。


「自分を受け入れるというのはとても難しいことで、ゆっくり時間をかけることが必要。 1つずつピースを積み重ねるように、自分を進化させていけばいい」 つらい出来事でしたが、このことで大橋さんの生きづらさは、第1フェイズを終えることになりました。 とはいえ大橋さんの生きづらさは幕を閉じておらず、今は生きづらさ第2フェイズとして、自分の人生を歩まれておられます。

「表現の仕方は1つではない。」

今でこそ、話し上手といわれる大橋さんですが、昔は、あまり得意ではなかったそうです。 周囲から話し方についてダメ出しされることもあり、「自分の喋り方は変かなぁ。」と思うこともありました。


そんな大橋さんが、大事にしている考え方があります。 それは、 「話すということは、上手い下手ではない。試した時点で大成功。」 という考え方です。 人と比べずに、「失敗しても、やってみる!」という粘り強さがあればそれで大丈夫だと思ったのです。


また、表現の仕方は一つではありません。 口で話すのが苦手なら文章で伝えればいいですし、その他のやり方でも自分の思いを伝えることができる。 そのための練習として、 同じような生きづらさを抱える方が集まる居場所や、今回のようなセミナーなど、自分が話せる場を活用するのは、効果的な方法です。


大橋さんは、「コミュニケーションとは、人とのつながり方。」だと言います。


心がけるポイントは、“相手の気持ちを考える”こと。 気持ちが分からなければ、正直に聞いてみて、“自分自身をオープンに”してみましょう。


心がけるポイントは、相手の気持ちを考えること。 気持ちが分からなければ、正直に聞いてみて、自分自身をオープンにしてみましょう。 「自分のことを理解してくれる仲間が3人できれば、人は立ち上がることができる」 と大橋さんは、そう信じています。


第2部:大橋さんと山田(COMOLY運営責任者)のトークセッション

ここからは、セミナー後半の対談から、筆者が注目した部分を抜粋し、皆様に「相手への思いやり」 「命題(生きる意味)」の2つをご紹介いたします。

「"相手への思いやり"が無いと、コミュニケーションはうまく行かない。」
大橋:「コミュニケーションのポイントは相手に対する思いやりを持つこと。 で、相手に思いやりを持つためには、自分がまず癒されなければいけない。よく人に優しくしなさいって凄く教えるでしょ。 あれ私、バカかって思う。言い方悪くてごめんなさいね。 なんでかって言うと、自分が優しくしてもらってからじゃないと、人に決して優しくできないと僕は思う。」
山田:「確かにそうですね。凶悪な犯罪を起こしてしまった人が、 今までやさしくされたことが無く、事件を起こして後、初めて周りの人(病院の看護師さん)のやさしさが分かったっていう話を聞きました。」
大橋:「ひきこもり状態にある、生きづらい人達は、 人の温かみっていうのを感じてないんですよ。 だから変な話、自分のことをわかって欲しいという、一方的なラブコールが多いんですよ。」
山田:「なるほど。」
大橋:「そうすると、相手はウッとなるわけです。 でも、そのラブコールを出すのには、出す理由があるんですね。その人が悪いってわけではない。 “何故、そういう環境に追い立てられることになったのか?”。よく今、子どもが虐待死すると、お母さんが吊し上げにあうじゃないですか。」
山田:「はい…。」
大橋:「でも、あれ、おかしいんですよ。 だって、子育てはお母さん一人でやるものではない。」

「だから、虐待の傾向のあるお母さんは相談窓口に行かないんですよ。 自分を否定されるって思うから。」
山田:「そうですよね。」
大橋:「だから、虐待防止のオレンジリボンを している支援者に、虐待してるお母さんが相談するわけがない。」
山田:「あー、確かに。」
大橋:「だから、何が一番いいかっていうと、 “当事者が当事者同士で支えあって、どうお話しができるか”。なので、ぜひ、今日ご覧いただいてる方も、会場にいらっしゃる皆さんも、ぜひ自分の気持ちを正直に出してほしい。」
山田:「うん。」
大橋:「で、そん時にちょっと間違ったなって思ったら、ごめんね(-と素直に言う)、とか。 そういうことを繰り返してると、多分、おのずと話がうまくなっていくはずです。そして、相手への思いやりも芽生えてくると思ってます。」
「"命題(生きる意味)"を見つけるまで。」
山田:「先ほど、命題のお話を伺いました。命題を見つけるには、どうしたらいいですか?」
大橋:「よく、ひきこもり状態にある、 ご家族と本人の関係性って、一番は“働け”ですよね。 世の中で何か役に立て、その次に出てくるのが、あなたの好きなこと、関心のあることだったらば、 何でもいいからやりなさいって、よく言うじゃないですか。でも、私が思うのは、それがわからないから、今なんですよ。」
山田:「うん、うん。」
大橋:「それが見つけられないから、 “今こういう風に生きづらい状態にあるっていうことを、 まずは受け入れる”っていうのが大事だと思うんです。それで、私が考えている方法っていうのは、 好きなことからではなく、嫌いなことから考えていく。」
山田:「なるほど。」
大橋:「あと僕は、いくらぐらい稼ぎたいとか、率直に聞きます。」

「で、働きたいとか働きたくないとか、気持ちを素直に出していく。そういう風に考えていった時に、無の自分になった時に、 きっと、これは見つかると思います。 今の自分の状態や環境を否定してないこと、これもこれで一つの生き方として有りだと考えること。 しかし、これよりももっと良い生き方があるのであれば、居場所やセミナーなど人に会って色々話を聞いてみることも一つの方法です。」
大橋: 「一発で見つけようとするから、きついんです。 でもね、うちら、ひきこもり状態の人たちってね、“さよなら逆転ホームラン”を求めるんだよね。 それだけ苦しいから。 でも、申し訳ないんだけど、それはないと思う。一般の多くの方は、逆転ホームランってのはなくて、 地道に、これやってみてどうだったかっていう、振り返りをしながら、見つけていく。それで僕、いいと思います。」
大橋: 「これを言うとね、“大橋さん、気休め言うなよ、 俺たちは、もう40、50で切羽詰まってんだよ”って、なると思う。実際、俺もそう思う。でも、もう、しょうがないよね。 時は変えられないし、戻れないから、そこで出来ることを、最善策を尽くしてやっていくしかないんですよね。 それが万策尽きて、もう、きついなって思ったらば、例えば、公的扶助の力を借りるとかの生き方も、1つの選択。 だから、足掻ける時まで足掻けばいいと思いますね。僕は、そういう形で、命(いのち)の命題ってのは見つかるかなと思いますね。」
大橋:「私は、人生は価値付け、意味付けだと思ってます。 ひきこもっている時間は決して無駄では無く、財産になることも十分に有ります。 是非、ご自身で考えてみてください。」

今回の記事は以上となります。お読み頂きありがとうございました。読者の皆様は、どのように思われましたか? 感じた事など、ぜひツイッターなどのSNSボタンから共有してみてください。


また、お時間ありましたら、下の動画からセミナーの様子をご覧いただければ幸いです。 宜しければ高評価とチャンネル登録、お願い致します。ご意見ご感想など、お気軽にコメントをお寄せください。


この記事をつくった人

COMOLY
登録者
執 筆
今回の原稿は、ヒロヒロさんに書いて頂きました。おつかれさまでした。とても良くまとめられていて、助かりました。ありがとうございます。
Webエンジニア
釼持 智昭
編 集
ひきこもり歴6年半の元当事者。2019年7月からプログラミングを学び、多方面で活躍。
サポート対応
望月 理江
撮 影
2019年末から運営メンバーに参画。ボランティアなどで海外に滞在した経験から、英語が得意。映像系の仕事に詳しい。海と機材とお酒が好き。