第8回 COMOLY オンラインセミナー

公開:2021年3月25日
発行:COMOLY

ひきこもりとセクシャルマイノリティを語る    

講師:おがたけ 氏
Queer Lounge H 代表

1. 「キラキラひきこもり当事者」のおがたけ⽒

「キラキラひきこもり当事者」であると同時に「ひきこもりドラァグクイーンのヒキー ネ・コモリーダ」という顔もあわせ持つおがたけ⽒。「キラキラひきこもり当事者」というのは、読んで字のごとく、表に⽴ってキラキラしているひきこもり当事者です。

「ひきこもりと⾔うと、真剣に、微細に、深刻に話してしまうところがあると思ってい て、でもその中から負けん気なジョークが出てもいいんじゃないかなと思うところもあるんです。」とおがたけ⽒。「キラキラひきこもり当事者」という枠組みにもそういった強さが感じられます。

2. Queer Lounge Hについて

東松⼭にあるひきこもりのコミュニティスペースQueer Lounge H(クィア・ラウン ジ・アッシュ)の代表であるおがたけ⽒。Queer Lounge Hは社会福祉協議会の施設を借りて⽉に3~4回開催されています(現在は「ゆるヒキ⼥⼦会」など、Discordを使⽤した オンライン開催)。主な対象者は、不登校の当事者や経験者、ひきこもりの当事者や経験者、セクシャルマイノリティ、LGBTQ、家族、親族、姉妹、兄弟、友⼈、⽀援者なんらかの形でかかわっている⼈、そして理解と関⼼の両⽅がある⼈が参加することができるそうです。

3. セクシュアルマイノリティ×ひきこもりエピソード

2011年に、保健所でひきこもり相談をしたおがたけ氏。当時同じくらいの年代の男性にひきこもりであることが言いづらいと感じていたそうです。色々とヒアリングされましたが、本質的なことを話すには至らず、その後ひきこもり相談の中で臨床心理士のカウンセリングを受けることが可能であることを知ったおがたけ氏は、女性のカウンセラーさんに「セクシュアルなことでひきこもってしまう人っていますか」と質問。さらりと「たくさんいると思いますよ」の一言がきっかけで、そこから話を進めることができたそうです。

また、2013年に参加したイベントの申し込みの性別欄に、男性か⼥性かの⼆択しかなかったそう。Twitterに「これじゃ申し込めない」と投稿したところ、運営スタッフから反応がきて男性、⼥性、その他という項⽬に変更してもらったそうです。現在も男⼥の⼆択しかないものをみかけることがあるが、⾒かけたときには⾃由記⼊欄に「その他もいれてください」と要望を書くようにしているのだそうです。

ひきこもりの最中は主にネットの世界にいたそう。しかしネットは完全には逃げ場にならなかったとおがたけ⽒。「ホモネタ」がはびこっていて、その⾔葉だけピントをずらして見ないようにしていたそうです。男性同性愛がネタにされている差別の元になっていることはもちろん、何より出演している⽅々、セックスワーカーの⽅々に対する⼈権侵害にもなり得ると考えているそうです。

おがたけ⽒⾃⾝もひきこもり当事者かつセクシュアルマイノリティを現在進⾏形で経験しているからこそ、「社会において存在できない存在」に⽿を澄ます、⽬を凝らす、そういう想像⼒を持ってほしいとおがたけ⽒は仰っています。

4. シスヘテロ男性にこそ届いてほしい想い

シスヘテロというのは、シスジェンダー(性⾃認と⾝体の性別が等しい状態)とヘテロセクシュアル(⼥性が男性のみに、男性が⼥性のみに性的欲望や恋愛感情を覚えること)をかけあわせた状態で、いわゆる俗語で「ノンケ」や「ストレート」をさします。

おがたけ⽒は、シスヘテロ男性にこそ、ジェンダーやセクシュアリティについて考えてほしいと熱く想いを述べています。例えば、あるひきこもりイベントにてグラビアアイドルに会えるという内容のものが開催されましたが、ひきこもりがあくまでもシスヘテロ男性に限定的であることなどに怒り⼼頭したそうです。また1998年の斎藤環⽒著『社会的ひきこもり』のなかで「ひきこもりは男性が多い。異性との出会いが重要」とあり、そういった限定的な内容に失望したそうです。その後はTwitterで斎藤⽒にコメントを投げかけたり、2020年におがたけ⽒⾃⾝がテレビ出演した際に同じくリモート出演していた斎藤⽒が「最近はセクシュアリティの問題も⾊々あることが分かってきた」と仰ったそうです。「⻑い戦いだった」とおがたけ⽒。社会が男性中⼼主義社会であることを振り返る、変化していくという意識を持っていくことが⼤切だと考えているそうです。

⼀⽅で、ゆるくひきこもりで繋がって、“だいたい”⼥⼦で集まる「ゆるヒキ⼥⼦会」というコミュニティも運営しているおがたけ⽒。「⼈の性というものははっきりくっきりすることはできないのではないかと思います。フラットにそういう話題をひきこもりというテーマで話せればなと考えています。」と仰っています。

筆者の感想

おがたけ⽒は最後に、「あいまいなものや相反したものが存在することが、ありのままであり、多様性である。意⾒を⼀つにまとめなくてはならない必要性なんかない、と考えただけで少し楽になるのではないか。」とまとめています。私もよく意⾒や考え事に⽭盾が⽣じてしまうので、この⾔葉にとても救われました。また、私⾃⾝はシスヘテロ⼥性ではありますが、シスヘテロ男性だけでなく社会全体が、もっと多様性を愛することのできる、受け⼊れることができるものになっていく、変化していく想像⼒をもつことが⼤切だなと思いました。


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この記事をつくった人

COMOLY
登録者
執 筆
COMOLYに登録して、色々な活動に参加。現在在宅ワークの幅を広めるため、日々修練中。
サポート対応
望月 理江
編 集
2019年末から運営メンバーに参画。ボランティア活動を通じて海外に滞在した経験から、英語が得意。映像系の仕事に詳しい。海と機材とお酒が好き。
Webエンジニア
釼持 智昭
投 稿
ひきこもり経験6年半の元当事者。2019年7月からプログラミングを学び、 翌年1月に「COMOLY」を共同でリリース。以降、当事者目線で運営に携わる。