第7回 COMOLY オンラインセミナー

公開:2021年3月9日
発行:COMOLY

eスポーツはなぜ世界で注目されるのか?eスポーツの魅力と将来性を語る

講師: 鶴岡 善治 つるおか よしはる
株式会社 chouette シュエット 代表取締役

2021年1月21日、第7回COMOLYオンラインセミナーを開催しました。

講師は、 株式会社chouetteシュエット、代表取締役の「鶴岡善治つるおかよしはるさんです。

株式会社 chouette オフィシャルウェブサイト

タイトルは、「eスポーツはなぜ世界で注目されるのか?eスポーツの魅力と将来性を語る」です。

講師の鶴岡さんは、Apple本社でios開発に携わった経歴を持ち、現在はeスポーツ関 連企業の代表取締役として活躍されています。

事業と並行して、ひきこもり当事者やホームレス生活者への支援活動も行われてきた鶴岡さんですが、 実はご自身も、二度のひきこもり生活と、ホームレス生活を余儀なくされた過去があります。

そんな鶴岡さんに、eスポーツに出会ったきっかけや、eスポーツの魅力と可能性について、お話していただきました。

1.eスポーツとは「競技性のあるゲーム」である

eスポーツとは、Electronicエレクトロニック Sportsスポーツの略称です。 主にPCゲーム、家庭用ゲーム、モバイルゲームを用いて行い、ルールに沿って対戦し、勝敗を競い合うスポーツです。

近年、世界で活躍しているプロゲーマーの中には、個人で高額な賞金を稼いでいる選手もいます。過去、ある世界大会の賞金総額は、 32億円にも登りました。今や、eスポーツは着実に産業として成り立ち、その盛り上がりは凄まじいものとなっています。

一般的なゲームとして、RPGやシューティング等、さまざまなジャンルのタイトルが普及していますが、eスポーツとして公認される為の条件が定められています。

1. ゲーム内容に競技性が含まれていること
2. ゲームとして3ヶ月以上の運営・販売実績があること
3. 今後もeスポーツとして大会を運営する予定があること
4. eスポーツとして、大会の興行性が認められること

これらの条件は、 一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU) が掲げており、法的根拠など、海外の定義とは若干の違いがあるそうです。

現在、eスポーツの種目で圧倒的な人気を誇るタイトルは『 Leagueリーグ ofオブ Legendレジェンド 』と言われています。 通称、『LoLロル』と呼ばれ、『MOBAモ バ 』(Multiplayerマルチプレイヤー onlineオンライン battleバトル arenaアリーナ)というジャンルにあたります。

2.鶴岡さんとeスポーツとの出会い

鶴岡さんがeスポーツに出会った切っ掛けは、とあるゲームイベントでした。

運営メンバーとして、ひきこもり自助会のお手伝いを始めて2ヶ月間ほど経ったある日、鶴岡さんは、 「自分もイベントを主催したい」 と思い立ちます。

“生きづらさを感じている人に、ゲームを楽しんでもらい、ストレス発散の場を提供したい”という名目で 「スプラトゥーン2のプチ大会」 を、独自に開催しました。参加者がクジ引きで4人1組に分かれ、チーム戦で競い合う大会です。

当時、鶴岡さんは現実の困りごとについて話し合う場が大切だと感じる一方で、現実逃避も必要だと考えていたそうです。

現実を見つめることは大事だけれど、一旦目を背け、逃げる勇気も必要だと思い、“ゲームに逃げておいで”という気持ちで企画したと言います。

いざ開催当日を迎えてみると、驚いたことに、手伝っていた自助会の倍以上の来場者が訪れました。

「ゲームの企画でも、こんなに来てくれるんだ。」

その時、さまざまな生きづらさを抱えた若者たちが、1つのゲームを通じて、関係が深まっていくのを、鶴岡さんは目の当たりにします。 初めは緊張していた皆が、大会が終わる頃には、自然と「あの技、どうやって出したの?」と話し合い、打ち解けていました。

そして、大会に参加した男子高校生が、チームメイトとの出会いを経て、自身の苦境を乗り越えていく姿に、深く感銘を受けます。 同時に、ゲームが持つチカラに感動を覚え、ゲームへの探究心を深めます。そうして調べていく内に、eスポーツの魅力に惹かれ、 本格的に事業へと取り組んでいきました。

3.eスポーツの3つの魅力と可能性

鶴岡さんは、eスポーツの3つの魅力と可能性に注目しています。

1.老若男女が参加できる
eスポーツへの参加は、小学生から高齢者まで、年齢・性別にハードルはありません。ゲームへの興味と、没頭できる意欲があれば、誰でも参入可能と言えます。

2.障碍者と健常者が混合でできる
eスポーツは身体の動作が少なく、並外れた身体能力や筋力は必要ありません。とある関西の高校のeスポーツ部では、生まれつき脚が動かず、車椅子で生活している メンバーがいます。野球やサッカーでは考えられない混合チームが、eスポーツでは実現できるのです。

3.オンラインで、どこに居てもできる
1つの会場に集まらなくても、各地方、学校、屋内から、オンラインでアクセスできます。現状のコロナ禍でも、オンラインのeスポーツ大会が延期や中止になった例は少なく、 ほぼ予定通り開催されています。例外的に、オフラインで観客が集まり、選手が登壇する大規模な大会での延期はあったそうです。

鶴岡さんは、以上3つの観点から、多様性に適応できるeスポーツに注目しています。

4.eスポーツの懸念点

一方で、eスポーツ選手やeスポーツ事業関係者等、多くの方に話を伺っていくなかで、2つの懸念点も見えてきます。

1.健康面に問題が生じる可能性
試合中や練習中、常に座っている競技のため、足腰への負担や体力の低下など、身心への影響に不安があります。

2.引退後、選手のセカンドキャリアが得られにくい
その他のスポーツ選手と同様に、eスポーツ選手は引退後、別の仕事が見つかりにくいようです。

現在、2(セカンドキャリア)に関しては解消しやすくなっていますが、1(健康面)については、選手の意識次第では、解消が難しい問題です。

eスポーツのイメージを改善する為には、これら2つの懸念点にも取り組む必要があります。

5.社会貢献としてのeスポーツ

このような経緯があって、「eスポーツの可能性を最大限活用したい、eスポーツを通して社会貢献をしたい」 という信念のもと、鶴岡さんは 株式会社 chouette を設立します。

これまで、eスポーツ関連のコンサルティングと、eスポーツイベントの企画事業を請け負いながら、eスポーツスポット「e-Sortsイースポーツ CaféカフェGymジム chouetteシュエット」を運営してきました。

eスポーツスポットは、主に

・eスポーツを体験してもらうための場
・eスポーツの研究拠点としての場(※)

となる事を目指しています。

※ eスポーツ事業は、新興事業ゆえに情勢の変化が速く、常に動向を見ておかなければ、市場から取り残される恐れがあります。そのための研究拠点として 関係者をお招きし、社会貢献に活かす具体案等について議論を重ねています。

また、「選手の健康面の問題を解消したい」という願いから、名称にe-Sortsイースポーツ CaféカフェGymジムとあるように、 ジム事業者と提携し、フィジカル面のサポートも積極的にジム行ってきました。

現在は、残念ながらコロナの影響で提携先のジムが閉店したため、緊急事態宣言等の状況を踏まえ、タイミングを伺いながら、新たな展開を模索中との事です。

6.eスポーツとひきこもりの親和性

鶴岡さんは、ご自身の経験からひきこもりは最高といいます。

ひきこもり当事者は自分のペース、自分の環境で、あらゆる可能性を生み出せるからです。

これまでに出会ったeスポーツ選手は、一度ひきこもったことでゲームの世界にハマった人が多いそうです。中には「家でできることがあるなら、一緒にやりましょ う」と声をかけた所、『Apexエーペックス Legendsレジェンズ』のプロゲーマーになった方もいます。

自分の興味を刺激する何かに出会い、ひたむきに没頭し、技術を磨く事は、ひきこもり当事者の方々の、大きな強みになります。

鶴岡さんは、こうした活動を通じて、気付きを得ていく当事者の方々を見ていると、ワクワクするそうです。これからも、eスポーツを通じた活動を続けて欲しいですね。

7.質疑応答

質問者の方: 「eスポーツに可能性を感じました。お小遣い程度でも稼げるようになるには、どのような要素が必要ですか?」
鶴岡さん: 「1番簡単に稼ごうと思ったら、twitchツイッチ、というAmazonが運営しているYouTubeのような動画配信サービスで、 有名になってスター性を高めることですね。 スター性といっても色々ありますが、例えば人間的な魅力や面白さです。 “歌が上手いからこの人が好き”など。顔や声を好きになってもらったり。 そうして有名になることで収益化に繋がります。 ゲームが単純に上手いと、“ゲームのプレイセンスやプレイスタイル、キャラコントロール力が参考になる”ということでファンがつきます。 ここが入り口としては、簡単です。入り口まではしんどいですが、収益化してしまえば簡単かな、というところです。 「現在YouTubeとtwitchでは、 twitchのほうが審査基準が緩いので、今はtwitchへの参入がおすすめです。 それ以外では、イベントを開くことですかね。」
山田(COMOLY代表): 「可能性がありますよね。今はプラットフォームが結構出てきているし、eスポーツチームに入らなくてもまずは自分で発信したりとか。 新しい技をどうやって出して倒そうか…ってYouTubeで配信したり。それをやりながらブログで稼いで、YouTubeでファンをつくったり。 結構いろんな入り口があるなあと思っています。」

感想

ゲームには、子どもの頃から親しんできました。eスポーツ業界については、セミナーに参加させていただくまで、詳しく知りませんでした。 人間関係につまずいてきた自分にとって、ある種の対人スキルが求められる、競技性のあるゲームには、あまり馴染みがなかったからです。 でも、対人スキルもゲームの腕も、トライ・アンド・エラーの積み重ねで身につけていく点では、似ていると思いました。 この機会に、なにか1つ始めてみたいです。


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この記事をつくった人

COMOLY
登録者
執 筆
COMOLYに登録して、色々な活動に参加。現在在宅ワークの幅を広めるため、日々修練中。
サポート対応
望月 理江
編 集
2019年末から運営メンバーに参画。ボランティア活動を通じて海外に滞在した経験から、英語が得意。映像系の仕事に詳しい。海と機材とお酒が好き。
Webエンジニア
釼持 智昭
投 稿
ひきこもり経験6年半の元当事者。2019年7月からプログラミングを学び、 翌年1月に「COMOLY」を共同でリリース。以降、当事者目線で運営に携わる。