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メタバースが変える新しいひきこもり支援の形

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ひきこもり支援において、ひきこもりの状態にある当事者の人々の「支援につながりたいが、対面での相談に抵抗がある」「外出のハードルが高い」などといった課題が多く聞かれます。こうした中、メタバースを活用した新しい支援の形が注目されています。本記事では、メタバースを活用したひきこもり支援のメリットや活用事例、導入のポイントを紹介し、事業所や自治体がどのように活用できるかを考えます。

現在のひきこもり支援の課題とメタバースの新しい可能性とは?

ひきこもりと社会参加の壁

ひきこもりに至る理由はさまざまで、不登校や対人関係のつまずき、病気や家族の看護、受験や就職の失敗などが挙げられます。ひきこもりの状態が長くなり、人との交流の機会が減ると、対人関係を築いていくことに不安が増し、新たなコミュニティに入ること自体が大きなハードルになります。

外出する機会が減るほど社会参加への不安も増し、行動を起こしにくくなるなど、こうした要因が重なり、社会参加の壁となっています。

メタバースとは? 現実と仮想をつなぐ新しい空間

メタバースとは、インターネット上に作られた仮想空間のことです。利用者はアバター(自分の分身)を使ってその空間に入り、他の人と交流したり、仕事や学習、イベントに参加したりできます。

一般的なゲームとは異なり、現実の社会活動とつながっているのが特徴です。たとえば、バーチャルオフィスで働いたり、オンライン授業を受けたり、メタバース内で経済活動(買い物・取引など)をすることも可能になります。

また、物理的な移動の必要性や見た目への制約がないため、外出が難しい人や対面でのコミュニケーションが苦手な人でも、気軽に社会とつながることができます。現実を完全に置き換えるものではなく、新しい形のコミュニケーションや社会参加の手段として注目されています。

メタバースがひきこもりの課題をどう解決できるのか?

メタバースによるひきこもり支援の可能性

メタバースは、ひきこもりの人が社会とつながることのできる新しい手段になる可能性があります。従来の社会参加は、学校や職場などのリアルなコミュニティに属することが前提でしたが、メタバースなら誰でも気軽に関わることができます。

場所の制約がなく、インターネット環境さえあればどこに住んでいてもアクセス可能。自宅にいながら他者と交流できます。
対面での会話に不安を感じる人も、オンライン上のイベントやゲームを通じて自然に人と関わることが可能です。

バーチャルオフィスでの仕事やオンライン学習、イベントの運営など、現実世界に近い形で活用できることができ、近年注目されています。

メタバースを活用したひきこもり支援の具体例

「KOMORIBITO FES」 COMOLY × 豊島区

KOMORIBITO FES 2024の様子:https://comoly.jp/komoribitofes2024

COMOLYでは、豊島区と連携し、日本最大級のイベント「KOMORIBITO(コモリビト) FES」を開催しました。

本イベントは、ひきこもり当事者が企画・運営・出展を担い、音楽やアートを通じて才能を発揮できる場を提供しています。作品展示やゲーム、ステージライブなどの会場イベントと共に、全国の当事者が参加できるメタバース特設会場を用意。オンライン配信も行い、創作発表や交流の機会を創出しました。メタバース会場では、KOMORIBITO(ひきこもり当事者たち)たちがCOMOLYで行ってきた活動や各部活の紹介などを行うなど、メタバース空間を活用して「ひきこもったまま、つながれる」ことで、当事者の活躍のを広げる新たな可能性を生み出します。
2024年のKOMORIBITO FESでは、メタバース会場はNTTコノキューが提供するWEBブラウザで利用できる仮想空間プラットフォーム「DOOR」を用いて制作しました。(「DOOR」 )

「メタバース居場所」oVice × 江戸川区

引用:https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e091/kenko/fukushikaigo/hikikomori/onlineibasyo.html

江戸川区では、ひきこもり当事者やその家族を支援するため、「メタバース居場所」と当事者家族向けの対話交流会を開催しています。

参加方法は、オンラインとリアル会場のどちらかを選ぶことができ、オンライン参加にはoVice株式会社が提供する仮想空間「oVice(オヴィス)」を活用。声を出さずに利用できるチャット機能や、様子を見るだけの参加も可能となっており、当事者が安心して参加できる環境を整えています。

参加者が自ら決めたトークテーマにそって対話を行うなど、参加者が無理をすることなく交流する場所をメタバースを通じて提供しています。

「ひきこもり支援×メタバースソリューション」TOPPAN株式会社

引用:https://solution.toppan.co.jp/newnormal/service/metapa_hiki.html

TOPPAN株式会社の「ひきこもり支援×メタバースソリューション」は、ひきこもり当事者が自治体の相談窓口に行きづらいことや、自治体が当事者にリーチできないという課題を解決するための取り組みです。

自治体がメタバースを活用し、相談窓口や居場所をオンラインで提供することで、アバターを介した相談や1対1の面談が可能になります。さらに、専門NPOと連携することで、これまで支援を受けにくかった当事者が、自宅から安心して参加できる環境を整えます。

2024年11月5日には、複数のバーチャル店舗を集約したメタバースモール「メタパ®」をベースに、自治体向けの機能を実装した「メタパ® for 自治体」を提供開始。名古屋市での導入を皮切りに、全国展開を目指し、電子申請や防災訓練機能の追加も予定しています。自治体の支援の可能性を広げる新たな手段となります。

ひきこもり支援におけるメタバース活用の注意点

通話よりもチャットの方が好まれる

ひきこもりの人の中には、音声通話で発言や会話をすることに強い苦手意識を持つ人もいます。そのため、メタバース内でのコミュニケーション手段として、テキストチャットを選ぶ選択肢があることが重要です。文字であれば、ゆっくりと考えて発言できるため、対話のハードルが下がり、安心して交流できる場を作りやすくなります。

端末のスペックに依存しないようにする

メタバースはVR対応のものが多いですが、高価なVR機器や高性能PCを持っていない人も多くいます。そのため、スマホや低スペックPCでも利用できるプラットフォームを選ぶことが大切です。負担を減らし、誰でもアクセスしやすい環境を整えることで、ひきこもり支援の場としての可能性を広げられます。

3Dではなく2D

誰でもアクセスしやすい、端末に依存しないプラットフォームを用意する方法として、3Dではなく2Dの環境を用意するのもおすすめです。3Dのメタバースは没入感が高い一方で、高性能なPCやVR機器が必要になることが多く、環境を整えられない人にはハードルが高くなります。一方、2Dのメタバースであれば、専用機器を持っていなくても動作が軽く、低スペックのPCやスマホでも利用しやすいため、より多くの人が参加しやすくなります。

まとめ:メタバースはひきこもりにとって希望の一歩になるか?

メタバースが提供する「安心できる居場所」と「新しい社会参加のカタチ」

メタバースは、ひきこもりの人々にとって「安心できる居場所」と「新しい社会参加のカタチ」を提供する場として大きな可能性を秘めています。リアルな社会とのつながりが難しいと感じている人々にとって、メタバース内で自分のペースで活動できることは、精神的な負担を軽減し、少しずつ社会との接点を持つ手助けになるでしょう。

ひきこもり支援をしたい、または支援がうまくいかないという課題に対し、メタバースやVRに得意な企業、さらにはひきこもり支援の専門家とも繋いでくれる企業と一緒にメタバースを用いたサービスを展開することで、今まで以上にひきこもり当事者を支援に繋げていくことが可能になるでしょう。

メタバースはひきこもり当事者の支援や社会参加へのハードルを下げるだけでなく、その空間自体が新たな社会参加の場となる可能性も秘めています。メタバースを効果的に利用してひきこもり支援に繋げていきましょう!