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24.06.1424.07.16

【ひきこもり支援学習ツールをWebアプリ化】Webアプリケーション開発のCOMOLYへの依頼背景を伺いました

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今回は、WEBアプリケーション開発をご依頼いただいた、宮崎大学教育学部・境泉洋(さかいもとひろ)教授へのインタビューです。

釼持:境教授、本日は宜しくお願いいたします。始めに、簡単に自己紹介をお願いしても宜しいでしょうか。

境教授:はい、宜しくお願いします。私は人間科学の博士で、主にひきこもり状態のご本人の方々やご家族への調査を行い、支援方法について研究しています。COMOLYさんへの依頼は、私が過去に作った「ご本人とご家族のための支援プログラム」のデジタル化で、学習ツールの開発になります。

宮崎大学教育学部の境泉洋教授

依頼者:境 泉洋(さかい もとひろ)
 宮崎大学教育学部教授。宮崎県生まれ。1999年宮崎大学教育学部卒。2005年早稲田大学 博士(人間科学)。公認心理師、臨床心理士。2004年志學館大学講師、2007年徳島大学准教授、2018年宮崎大学教育学部准教授を経て、2021年1月から現職。

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境教授が研究を始めたきっかけ

釼持:ありがとうございます。宜しければ研究を始めたきっかけなど教えていただけますか?

境教授:はい。実は20年以上前、私が大学生の時に先生の紹介で、不登校の小学生の家庭教師をしていたのですが、その子がひきこもり状態だったんです。調子の良い日は一緒に散歩をしたり、オモチャ屋さんへ行ったり、学校の登校に付き添ったり、今で言う「訪問支援」をしていました。当時は実践例がなく、指導教員に相談しながら手探り状態で。

釼持:そうなんですね。私も別の支援団体で訪問支援をしているのですが、手探りで訪問支援をされていたとは……すごいお話です。

境教授:大学院の修士2年生だったある日、彼の親御さんが「全国ひきこもり家族会連合会」(以下、KHJ)の埼玉県支部「けやきの会」の月例会に通っていたのを知り、一緒に連れて行ってもらいました。

実は私が研究を始めたのは、そこでKHJの会長だった奥山さんと話したのがきっかけです。まだ「ひきこもり」という言葉が出始めた頃でしたが、会場は100人を超える満員の参加者で熱気に溢れ、これだけ多くの人が関わる問題なのだと知り、何かできることがないかと相談し、講演会などのお手伝いを始めました。

釼持:なるほど。当時から、ご本人ご家族の方々が多くいらっしゃったんですね。

境教授:未だ、不登校やひきこもり状態がご本人の問題とされる世の中ですが、奥山さんは当時から社会問題だと訴え、「ひきこもっている人たちは時代のカナリアだ」と仰っていました。

その後、KHJの支部として55箇所の家族会が全国で次々と立ち上がり、私はご縁で全国規模の実態調査もさせていただくようになりました。いま住んでいる宮崎県支部「楠の会」とは、県の受託事業に一緒に取り組むなど、連携を続けています。

釼持:奥山さんたちが全国を回り呼び掛けていたんですよね。55箇所もの家族会があるとは、驚きです。

境教授:その後も、彼の親御さんとは年賀状などで連絡を続けていたのですが、10年以上経ったある日、本人と再会しました。当時の事や、アルバイトをしていることなど嬉しそうに話してくれましたよ。私の訪問支援は、彼にとって良い思い出だったようで、嬉しかったです。

教授の研究内容

釼持:そうした経験から、大学でひきこもり支援に関わる研究をされているのですね。

境教授:そうですね。早稲田の博士課程を卒業後、鹿児島の志學館大学で臨床心理士の養成に携わるようになりました。その後、徳島大学へ移り、ひきこもりの研究を続ける中で、高知県教育委員会から若者の社会的自立に役立つ心理教育プログラムの開発依頼を受けたんです。

それで、ひきこもり経験者の方にも使ってもらえるように、ソーシャルスキルトレーニングなどを盛り込み、オリジナルで「若者はばたけプログラム」をつくりました。これは、全国各地域で自由に使っていただけるもので、実際にいくつかの支援機関が取り入れて下さっています。

釼持:ひきこもりご家族向けのプログラムも境教授が作られたのですか?

境教授:ご家族向けプログラムのもととなっているCRAFT(コミュニティ強化と家族トレーニング)は、研究活動でアメリカに行った際に教えてもらいまして、これはひきこもりのご家族の方にも有効だと思い、当時、私の研究室の大学院生だった野中先生(現・武蔵野大学准教授 )と協力して「CRAFT ひきこもりの家族支援ワークブック」を2013年に出版しました。

釼持:そうだったんですね。その後すぐ、効果検証を報告する論文もだされていますよね。

境教授:2015年には野中先生を含め研究メンバーと共に、CRAFTの有効性を検証する論文「ひきこもり状態にある人の親に対するCRAFTプログラムの効果」を発表しました。ですがアナログの質問紙では、アセスメントの関連付けが難しいなど課題があったので、今回のようにデジタル化を進めている所です。

釼持:なるほど、ありがとうございます。ご依頼いただいた自己学習ツール開発は、境教授が研究中の「コミュニティワイド認知行動療法の開発」の取り組みの1つとお伺いしていますが、それについて教えていただけますか?

境教授:はい。「コミュニティワイド」というのは、実は私の造語です。これは、ひきこもりを経験した方々への「家族以外の理解者を増やす」ことを指しています。

ただし、理解者が近隣の住民など、地理的に近い人達である必要はないと考えていて、つまりオンラインも含め「社会とつながる先に誰かがいること」、私はそれをコミュニティ(=地域)と表現しています。

そのコミュニティを作ったり、広げることも含めて実施する、認知行動療法になりますね。

依頼した経緯と今後の展望

釼持:改めて、COMOLYにご依頼いただいた理由をお聞かせください。

境教授:さきほどお話しした私の研究や、新型コロナウィルス感染症が世界的に蔓延した影響もあり、早くオンラインツールを開発しようと考えていたのですが、私のプログラムの主旨を理解してくれる開発会社がなかなか見つかりませんでした。

そんな時、知り合いがCOMOLYさんを紹介してくれたんです。COMOLYさんは当事者の方々もお仕事に携わっていますし、当事者に寄り添う立場からの意見も含め、うまくコミュニケーションをとりながら開発していただけると思い、依頼しました。

釼持:ありがとうございます。私達もお役に立てて嬉しく思います。今後、どのような展開を考えていらっしゃいますか?

境教授:そうですね、このツールを支援機関やご家庭の中に取り入れてもらえると嬉しいですね。COMOLYさんには、そのためのイメージビデオも私が監修して2本制作していただきました。

まずは、ひきこもり地域支援センターなどで使っていただき、有効性を実感してもらえたらと思っています。また、プログラムを進める上で伴走する支援者の方も必要なので、支援者としてのスキル向上も支援する展開も目指しています。

皆様へのメッセージ

釼持:最後に、境教授から皆様へメッセージをお願いいたします。

境教授:ひきこもり状態は、これからの人生を始める良いチャンスにもなります。ご本人の方は焦らず、自分にとって大切な人との出会い、やりたいことの学びから始めて欲しいですね。当事者の声をすくい上げてくれるCOMOLYのような所で、ちょっと緩めに在宅で働ける環境で自信をつけるのも良いと思います。今回、ツールの開発に携わって下さったCOMOLY登録者の方々もありがとうございました。

ご家族の方は、ぜひご本人を信じて応援してあげて下さい。支援者も、なかなか進展しない状況につい焦ってしまうものですが、長い目でじっくり関わってもらいたいなと思っています。私の研究が少しでも皆様のお役に立てたら幸いです。